November 1, 2019

プログレッシブ教育 (5) ガードナー

Howard Gardner ハワード・ガードナー(Born in PA, USA, 1943~)

1983年に発表した「多重知能理論(Frames of Mind: The Theory of Multiple Intelligences)」(MI理論)で一躍注目されたハーバード大学教授のガードナー博士、幼い頃から勉強好きで特に音楽が好きだったらしい。ピアノがとても上手だったそうでプロは目指さなかったものの一時期ピアノを教えていた頃もある

ペンシルバニア州に生まれたガードナー、ご両親は第2次世界対戦前にドイツから避難してきたユダヤ人。息子に高校はアンドーバー(ボストンにある超有名ボーディングスクール)に行ってほしかったけれど本人が選んだのは地元ペンシルバニアのプレップスクールだったそうで、この話からだけもかなり優秀で裕福なご家庭だったのが伝わってきますね

ガードナーが多重知能理論を提唱する前までは、IQ : 知能指数(Intelligence Quotient) がたったひとつの知能を測る指標として考えられていたが、ガードナーは「知能は単一ではなく複数ある」「知能とは、ある文化において価値があると見なされる問題を解決したり価値があるとされているものを創造する能力」と定義した — ひとりの人間の中に複数の知能があり、それぞれの知能は脳内で対応する機能部分を持っている。複数の知能の種類は次の8つ:

1. 言語的知能
2. 論理数学的知能
3. 空間的知能
4. 身体運動的知能
5. 音楽的知能
6. 対人的知能(他者理解)
7. 内省的知能(自己理解)
8. 博物的知能(自然理解)

上記8つの知能をざっと見て感じることはありませんか?

学校教育の科目を見てみると

国語
算数・数学
理科
社会(地理、歴史)
体育
音楽
美術・図画工作
道徳
家庭科・生活科
総合学習・行事など
見学などの特別活動

ガードナーの提唱する8つの知能をまんべんなく含んでいると思いませんか?

またモンテッソーリ教育のプログラムを見ても

・日常生活の練習
・感覚教育
・算数
・言語
・文化教育(社会、理科、歴史、音楽、美術、道徳(Grace and Courtesy - 善意と礼儀正しさ)・宗教)

ガードナーの提唱している8つの領域に対応しています(すごくないですか!100年前に考案された教育法ですよ!)


ガードナーのブログを読んでいて面白いトピックがありました。"Where is Talent? Nurturing talent is complex – and it is not enough" - "才能を育むとは ー そして育むだけでは足りない"

Instead of asking “Who is talented?” or “What is taletnt?”,  we should ponder “Where is talent” In so doing, we need to consider at least three entities: the person, the domain of expertise and the field of judges.

才能があるのは誰か?才能とは何か?と問うよりも、「才能はどこからくるのか?」と考えるべきだ。その時私達は3つのことを考慮しないといけない:本人、その人の専門分野、そしてどう判定するか、の3つである


ガードナーは多重知能理論提唱者なので、「才能」と一言で言ってもそれは非常に奥深いことを意味すると示唆しています。


In short, individuals can have quite different intellectual strengths and weaknesses. Moreover, there are other issues of character, will and motivation that determine whether talents will develop and how they will be deployed. 
つまり個人は全く異なる知的な長所と短所を持つ。さらに才能が伸びるかどうか、どのように彼らが発育するかどうかは本人の性格・意志および動機といった問題もある


アメリカの公立校にはギフテッド&タレンテッドのクラス・学校がありますが、その選別方式は4才のときの言語能力・図形パターン能力を試すだけの知能テストなので、ガードナーの多重知能理論からすると個人はある領域の長所と他の領域の短所を併せ持つ存在なので言語や図形パターンのテストのみで個々の才能を決められるわけがありません。アメリカ公教育においての「ギフテッドタレンテッド」の考え方自体がとても狭く片手落ちだということがわかるでしょう


古来から才能は神様からいただいたものとして考えられ、また遺伝とも思われているところがあります。しかしガードナーは本人の意志、得意分野、それを適切に評価してくれる人物の3点セットで才能を考える必要があり、また、才能がある、伸ばすだけでは不十分だと説いています・・・「世の中にとって良い事に正しく能力を使える人物を育む必要がある」

人間ひとりは多様な面があって、得意なことも不得意なこともある。得意な面を早くみつけて伸ばし、良い人間を育てるのが親や教育者の責任ということですね。本当にそのとおりです!