January 30, 2016

プログレッシブ教育(4) ヴィゴツキー

Lev Vygotsky レフ・ヴィゴツキー(Born in Russia, 1896~1934)

アメリカではピアジェの人気の影に隠れてしまった感のあるヴィゴツキー、38才の若さで亡くなっていますが、彼の教育理論はイタリア、レッジョ・エミリアでの教育などに取り入れられ最近注目をされるようになりました。

ロシア、ベラルーシの中流ユダヤ人家庭に生まれたヴィゴツキーは、モスクワ大学を卒業後、中高の文学の教師になり、この経験が、どうやって人間が学ぶのか?教師はどうあるべきか?を探求しはじめるきっかけでした、特に認識発達と言語発達、双方の学習における関係性に興味を持ちました。

ヴィゴツキーは心理学の領域に特別な訓練をせずに参入したため、子どもの発達について、非常に新鮮で斬新なアイデアを提示したので、現在でもその哲学は論争の的になっています。ヴィゴツキーは知能テスト測定結果のみで子どもの能力を決めることを否定しています。知能テストの結果(Quantitative Research:数量で測ること)と同様に、子どもについての注意深い観察結果(Qualitative Research:性質を調べること)が重要であると言います。

長い間、ピアジェの理論から、子どもは個人的な活動から自己を形成していくと考えられていたが、ヴィゴツキーは初めて、子どもは個人での活動と同時に子ども同士での関わり(social interaction)から社会的・認識的発達を相互に築くことを唱えました。個人的な活動と、社会的な活動は分けて考えるべきではなく、子どもを取り巻く家族、学校、地域、教育、文化、社会経済的な環境すべてから人間は形成されていく。どんな家族・友人に囲まれていたか、どんな学校に行ってどんな信条の元で育ったかが人間形成に反映される。子どもは子ども同士から毎日学んでいる。彼らは言語スキルを友人同士から学び、新たな考えを話し、聞くことで吸収する

ピアジェと同様、ヴィゴツキーも子どもは遊び(Play)から学ぶと信じました。子どもは遊びの中で言語と人間的成長を相互的に発展させる。

The Zone of Proximal Development (ZPD)発達の最近領域
 



ヴィゴツキーが提唱したアイデアの中で最も重要なものがこの「発達の最近接領域」というもの

ZPDとは、子どもが誰かの助けなしでひとりでできることと、誰かといっしょにやったり、ちょっと手伝ってもらったりしたらできることの差の領域のこと。ヴィゴツキーはScaffolding(足場)という専門用語も理論の中で使用していて、これは教師や友人からの助力を意味します。まわりの人を足がかりにして今の自分よりも更に限界を伸ばすことができるということ。限界を日々伸ばしていくことが人間の成長です

個人的に上記の存在を実感することがあります ー 去年娘を転校させたことで、彼女ができること・理解力・集中力・感性すべてが飛躍的に伸びてるのです。先生や周りの友人のレベルが(いろいろな意味で)アップしたので、本人の中に眠っていた才能が目覚めた、というようなイメージ。楽器やスポーツなど校外アクティビティでも、先生やチームを変えたら格段に本人のレベルも上がることはよくあると思います(錦織選手がコーチを変えてから飛躍的にメンタル・技術が上がったように)。人間って本当はもっともっと上達するんです、適切な環境や助力があれば

モンテッソーリやピアジェと同じく、ヴィゴツキーも観察(Observation)を非常に重要視しています、まずは目の前の子どもありき、ですね。子どものZPDを正確に判断するにはその子が言ったりしたりしている事を詳細に観察する必要があります。

ピアジェは身体的発達と認識発達が相互作用していると考えたので、ある段階にいる子どもはその段階から次にステップアップしない限りはできない事があると考えました。

しかしヴィゴツキーは認識発達は身体的な発達だけでなく周囲との関わりにも影響されると考えたので、その子どもひとりではできなかった事も、もう既にそれができる友人や大人の助力で可能になる事はたくさんある、だからよく本人のレベルを観察して、さらに能力を引き上げるようなカリキュラムを与えるべきだと考えました(できることばかりやらせるのではなく、ちょっと難しい課題を与えてどんどん限界を引き延ばすことが可能という考え)そのためには今の本人の能力を正確に判定する観察が必要不可欠ということです。

また、ヴィゴツキーは、学習と発達は似ているものの同じではないと考えました。(上記ZPDも発達に関してであって、学習能力のみを語っているのではないということ)適切な指導と本人の成長発達を大切にする、この2つの適切なコンビネーションが学びを最大限にすると考えました。


(プログレッシブ教育1〜4に関する出典はこちらの本)
Theories of Childhood, Second Edition: An Introduction to Dewey, Montessori, Erikson, Piaget & Vygotsky (Redleaf Professional Library)
Theories of Childhood, Second Edition: An Introduction to Dewey, Montessori, Erikson, Piaget & Vygotsky (Redleaf Professional Library)Carol Garhart Mooney

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