もともとはアーティスト&教師だったが、フロイトの娘のアンナに出会ってから心理学に興味をもつようになる。アンナはエリクソンに精神分析を学ぶことをすすめ、結果エリクソンはウィーン精神分析研究所で子どもの精神分析家の資格を得る
1933年にアメリカに移民、ハーバード医学部、イエール大学の教員を歴任。アイデンティティの概念を初めて世に提唱。子どもの精神分析家から出発し、発達心理学はもとより、自身が老いるにつれ人間が老いる段階でいかに生産的な人生を送れるかも研究した。
エリクソンが唱えた人間の社会心理的発達は「8つの人間の発達段階(The Eight Ages of Man)」としてまとめられた。これはすべての人間が生まれてから死ぬまでの期間を8つに分割し、各段階にどの部分が社会心理的に発達するか、しなければならないか、を定義づけたもの。
各段階において人間には成すべき課題があり、各段階が次の段階に影響を与える。前段階で成すべき課題が到達されていれば、次の段階でも上手く成長する。また、たとえある段階で正常な発達ができなくても、次のステージで正しい関係や環境に恵まれれば大丈夫。
Stages of Psychosocial Development(社会心理的発達段階) | ||
Age | Stage | Strength Developed |
誕生〜12ヶ月 | 信頼 vs 不信 | 希望 |
1~3 | 自治 vs 恥と疑念 | 意志 |
3~6 | 主導 vs 罪悪感 | 目的 |
6~11 | 勤勉 vs 劣等感 | 能力 |
思春期 | アイデンティティvs役割の混乱 | 忠誠 |
成人期 | 親密 vs 隔離 | 愛 |
中年期 | 生殖 vs 自己専心 | 世話 |
老年期 | 完全 vs 絶望 | 英知 |
誕生〜12ヶ月:信頼 vs 不信 (Trust vs Mistrust)
この時期に必要な事は赤ちゃんが世界を信頼できるようにケアすること。エリクソンはこの時期の信頼には2種類あると言う:ひとつは外的信頼、もうひとつは内的信頼
外的信頼とは、常に特定の大人が赤ちゃんのニーズを満たしてくれる事への信頼感
内的信頼とは、赤ちゃん自身が自分の能力を信じる力。自分の力が周りに与える影響力、あらゆる状況に耐えられうる力があると信じられること。
赤ちゃん自身が、わたしが生まれてきたこの世界は良いところだ〜!と思えたら、次の1年は大丈夫☆
アタッチメント、温かな肌のふれあいが赤ちゃんとの信頼を築く。赤ちゃんの要求にすぐに反応してあげること。寝返り、ハイハイ、つかまり立ちなど、動く練習を存分にさせてあげること。この時期に赤ちゃんの全ての要望に応えることは決して甘やかしではなく、自分に対する愛や信頼を強固なものとする。愛と信頼が芯に根付いた赤ちゃんは、人生2年目には大人や世界を信じているので、少しずつ待ったり、我慢したりできる。この信頼感が欠けている事こそが次の年代のギャーギャーの原因に
新たなものに出会う、見る、知ることは赤ちゃんにとっては怖い、でもそばにいつも同じ大人がいる、いつも要望に応えてくれる。そうやって大人が大事にしてくれれば、赤ちゃんは安心して身の回りの世界を探索できる
この時期に自分や自分に近い大人を信じられることが、次の段階の自立心を育むベースとなる。この時アタッチメントに失敗した場合、その後他人や事物に対する共感力が欠ける
特定の少人数の大人との強いアタッチメントが不可欠。そしてそれこそが次の段階の自律・自立とつながる。のちにその大人と離れることになっても基礎があるので大丈夫。
このエリクソンの説は、昼間働くお母さんが預けるデイケアの先生方が、どんなふうに新生児に接すればよいかの良い指標になりますね!
1〜3才:自治 vs 恥・疑念 (Autonomy vs Shame and Doubt)
いわゆるトドラー(Toddler)。この時期の子どもは恥辱や疑念に苦しむことなく自律性・自主性を獲得しなければならない
第1ステージを良く生きた子どもたちは、強い自己肯定感を獲得している。彼らは限られた時間であればいつも一緒の大人たちと難なく離れることができる
イヤイヤ期は強い自己主張の現れなので喜んで!
とても独立心が強いふるまいをしたかと思ったら、次の瞬間はやたらすがりついてきたりする。これはこの時期の子どもたちが事物をキープしたり、手放したり、を繰り返し実験しているからである
保持する事も、手放す事も、ある時は良く、ある時は悪くも作用する:例
保持する→ 支配・ガンコ・非協力的態度 vs アタッチメント・苦痛に絶えうる精神力・粘り強さの素
手放す→かんしゃく・怒りを抑えられない・叩く・噛む vs シェアできる・協力的・譲る
子どもはこういった保持する・手放す実験を繰り返して、どう生きるかのバランスを探している ー ここで適切な実験を繰り返さないと、その後の選択・保育者との関係・お友達との物事のシェア・トイレトレーニングに支障をきたす
適切な実験を繰り返せない状況とは、大人が障壁となって介入するからである ー この時期の子どもたちの気ままな様子は大人にとっては堪え難い一貫性の無さのため、指示・命令・権力・威圧で言うことを聞かせようとし、これが大問題。そのような大人のもとでは子どもは自由に依存・自立のバランスを実験できないからである(子どもは言われたことより、自分でやったことから学ぶんでしたね!)
この時期の子どもたちには、適切な選択肢と、自らが自由にその中から選択、操作するチャンスが必要
この時期はホントーに大切!!
なぜならエリクソンによれば、この時期を如何に過ごすかで生涯に渡っての
愛:憎しみ
協力的:非協力的
感情表現:感情を抑える
などの精神の割合が決められてしまうから!!
この時期を、自己コントロール力を自尊心損なうことなく上手く発達させた子どもは、強い自己肯定感を得られるので、 その後も自分に自信を持ち続けることができる。もし失敗すると自分を信じられない、自信のない人間になってしまう。
行き過ぎない自己肯定感・自尊心は、前向きで健康な精神に不可欠なのです
3〜6才:主導 vs 罪悪感(Initiative vs Guilt)
きました〜〜モンテッソーリのプライマリー・エイジ!どの教育・心理・精神学者たちもこの時期を分離し指摘しているのは、やっぱりこの3〜6才が"何かある!" マジカルな時期、非常に大切ということなのでは
エリクソンによればこの時期に子どもたちが獲得しなけばいけないのは「a sense of purpose=目的意識」
3〜6才の子どもたちはヤル気に満ちていて、学びの準備ができている。他のステージに比べて反抗心の割合が少なく先生や大人・まわりのお友達から「学びたい!吸収したい!(まさにabsorbent mind!)」気持ちのほうが強い
失敗にこだわることなくどんどんやれる。第2段階を乗り越え自己肯定感を得ているため、自分の目的のために着実に行動するよりも、とにかく物事をどんどんやって終わらせて行きたい傾向にある。
この時期たくさんの物事を吸収した子どもは後に自信と能力を発揮させる。彼らは自分で計画し、終えられることを信じられる。羞恥心や罪悪感を感じる事なく失敗から学び、失敗に絶えうる精神力を得る
攻撃的な態度・振る舞いがトドラーの頃より減り、ヤル気に満ち、大人に従うことが好きな時期なので、先生や親には扱いがラクなように見えるが、実はこの時期はメチャクチャ重要・・・この時期に生涯に渡って栄光を得るか、破滅するかの二手に人生わかれてしまうからである
もしもまわりの大人がこの時期の子どもたちの活力を良い方向に使わせてあげられれば、子どもたちは自信を持ち、能力を発揮するだろう。しかしもし大人が新たなスキルを獲得しようとしている子どもたちの失敗や未熟に焦点を当て非難するならば、彼らの創意は罪悪感と落胆に早変わりするだろう
せっかくの子どものヤル気を削ぐような大人はいない、とあなたは思っているかもしれない。でもあなたのちょっとした行動が子どもを落胆させ、自信を奪っている事は多々ある。潔癖すぎる大人は子どもにプレッシャーを与える。子どもが何か失敗した時、あなたの顔は笑っているかもしれないが、心が受容していない事を子どもは感じている。大人の強い警戒心や用心は、子どもがあなたに承認されていない事を感じるのを助ける
子ども自身の価値ではなく、その子どもが何をしたかの価値に重きを置かれ判断される事を子どもたちは感じている。その時子どもたちのクリエイティビティはダメージを受けないかもしれないが、子どもの心は「できなかった」罪悪感と不適正という感情を植え付けられるのだ
3〜6才児・エリクソン的注意点まとめ
・独立心を育む
・できた事に注目し、失敗をいちいち取り立てないー失敗していいんだ、そこから学ぶことがあるのだという姿勢を大人が自ら見せる
・それぞれの子どもの能力に見合った適度な期待を向ける
・現実の世界に沿った活動をする
プログレッシブ教育(3)ピアジェへ
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